2008年11月28日金曜日

オヤジの女房は俺のオンナ1




オヤジが連れて来た今度オレのオフクロになるってオンナは、見たところオレとそうたいして歳の違わない女だった。 
「おい、リョウ。よく聞いてくれ。彼女は日暮響子さんという。これから、お前の母さんになってもらおうと思っている。頼むな」
とオヤジがオレに言う。オレになにを頼むのか知らないが、ともかくいきなりのことでオレも少々面食らってしまった。
オレの実の母親、つまりオヤジの女房が病に倒れ一昨年の暮れにとうとう死んじまってから、はや二年が過ぎようとしている。オヤジだってまだ40半ばのオトコ盛り、まだまだ若い。結婚ぐらいするべきかもしれない。そう思ってはみたものの、連れて来た女が若すぎやしないか。そう思って、はじめてオヤジから紹介されたとき、
「失礼ですが、お幾つですか?」
って、オレはそのおオンナに聞いてみた。
「おい、女性に歳なんぞ聞くもんじゃないぞ」
と、いままでニタニタしていたオヤジが急に真面目な顔をオレに向けて云った。



「あらっ、いいのよ。だって、これからリョウ君のお母さんになるんだもの」
と、オヤジを遮りオレに笑顔を向ける。
「28歳です。見た目よりは、老けてみえるでしょう。リョウ君は23だっけ。お父さんから聞いたわ。母親っていうより姉弟って感じになれれば、わたしはうれしいわ。よろしくね」
「はい」
とは云ったものの、オレは心の中でドギマギしていた。老けて見えるだって。とんでもない、少しも老けてなんぞ見えない。むしろ逆だ。28だと云ったが、見ようによってはオレよりも若く見えるじゃないか。そんなことを思いながら、オレはマジマジとオヤジの女房になるオンナを見つめた。
 色白で清楚な顔立ちに、額の中央辺りから左右に分かれた髪の毛。その下にはスッと綺麗に通った鼻。二コリとした顔に品がある。グレーの落ち着いたシックに着込んだセーターが華奢な身体を覆って、女性らしいな艶めかしさを漂わせていた。一言でいって、かなりの美人だ。
 オレのオヤジは決して見栄えのいい男じゃない。頭だって少しだけど、もう薄くなっている。金だって、けっしてもってる方じゃない。こんないいオンナがどうしてオヤジの後妻になんか納まる気になったのか、息子のオレからしても不思議で仕方ない。

つづく


 
  

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