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いままでオヤジとオレとの男だけの所帯に女が、しかも若くてキレイな女が加わった。それだけでも大変な変化なのに、家の中、つまりオヤジたちの部屋はもちろん、リビングやキッチンなども、このオンナ、つまり響子の趣味に合わせて大変身してしまった。
もっともオヤジは云うまでもなく、オレにしたってもちろん悪くはないと思っている。いままでのゴミゴミした中で男が二人、なんの会話もなく、無愛想な顔をつき合わせていただけの生活からやっと開放されたのだ。家庭というのは、こういうものかっていうふうになってきた。とくに食事の時、女の声というものが、こうも家の中を明るいものにするものなのかと感心させられる。いつも無口で無愛想なオヤジがニコニコしている。時には声をあげて笑ってさえいる。そりゃ40半ばの男が若くて綺麗な嫁さんをもらえば、嬉しいには違いあるまい。しかし、である。こちらとしては少々困ることもあるのだ。
バイアグラ・レビトラ・シリアス
風呂上り、いつもオレはスッポンポンでキッチンの冷蔵庫からビールを出して、身体が冷えるまで一人で飲んでいたのだが、それができなくなった。いくら義理の母とはいえ、オレとの歳だって5つしか違わない女である。いままでのそんな自由が出来るわけがない。
それに響子はまだ若いくせに、たぶん実家の親に云われたかなんかしたのか、風呂というものは男が先に入るものと思っているらしい。オヤジやオレが仕事で帰りが遅くなったとしても、決して先に風呂に入ったりしないのだ。いつまでも帰るのを待って、男のオレ達を先に入れてから風呂を使う。
こちらを立ててくれるのはいいが、それだって困ることもある。
オレが自分の部屋に引きこもっているうちはいい。でもオレだっていつまでもそこでじっとしているわけじゃない。例によって、夜遅くキッチンへと行って冷蔵庫からビールを出していると、
「あら、あたしも貰っていいかしら」
と後ろから声がする。
「うん、いいよ」
と云ってオレが振り返ると、なんと響子が風呂から出たばかりの身体に、まだ服も着ずに、大きなタオルを巻きつけたままの格好で立っているじゃないか。
テーブルに向かい合って座ったのはいいが、オレは目のやり場に困った。胸のふくらみから肩、首筋、そしてスラリと伸びた裸の腕。その腕がゆっくりとビールのグラスへと伸びた。そしてオレを見てニッコリすると、
「乾杯!」
と云う。
「うん」
と云いながら、オレはコクンと響子に頷いた。
つづく
マダムとおしゃべり館
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