2008年12月19日金曜日

オヤジの女房はオレの女 19

バイアグラ・レビトラ・シリアス

「よければ、ぼくとお茶、つき合ってもらえない。君、いけてるよね。ステキだよ。ねぇ、ぼくとお茶しようよ。いいだろう。少しだけでいいからさぁ」
 ナンパだった。オレの響子をナンパするなんて許せない奴だ。オレはムッとして、そいつの顔を睨んでいた。
「ごめんなさいね。息子と一緒ですから」
「えっ? あっ、そうですか。すみませんでした」
と言い残して、男はアタフタと行ってしまった。男にしてみれば、響子が子持ち、しかもオレみたいなデカイのがいるなんて、思いもしなかったろう。しかし、腹の立つ奴だ。オレはしばらくの間、そいつの後姿を睨みつけていた。
「もうぉ、リョウちゃん。なに怖い顔してるのよ。ほら、行くわよ」
と言うと、響子はオレの右腕に自分の腕を廻して歩きだしていた。そして、時々オレの顔を覗き込んで、
「そんな、怖い顔しないの。ねっ」
と言って、オレを叱りつけた。
「でもさぁ、あたしもナンパされるなんて、まだまだいけてるってことよねぇ。ねぇ、ねぇ、どう思う」
と言って、組んだままのオレの右腕をひっぱりながら、嬉しそうに響子が笑った。
 オレは、ムッとして響子の顔を見返した。

バイアグラ・レビトラ・シリアス

「それじゃ、あいつとお茶でもすればいいじゃん。オレは、お邪魔かよ」
「あらぁ、妬いてるのぉ。かわいいねぇ」
「だっ、だれが妬くもんかい・・」
「だってぇ、リョウちゃん。もしかしてそうでないかい。えっ、おい。正直に言い給え」
「ふんっ、ナンパされて、喜んでらぁ」
「あなたのママの女っぷりも、なかなかってことよ。息子としては喜びなさいよ」
と言うと、響子は、口を開いてケラケラと笑った。
 オレとしては、なんか釈然としない気持ちだった。それがヤキモチなのかは知らないけれど、要するに響子も、もっとオレと一緒に怒って欲しかっただけかもしれない。
 いったん組んだ腕はもう金輪際離れないのか、オレの腕に廻した響子の腕が、一向にオレから外れる気配がない。これでは、親子というより恋人だ。
 もっとも、オレとしては、それがとても気に入っていたのだが・・。欲を言えば、もっとカラダをくっつけたい。でも、それは無理というものだ。
 響子は気前がいいのか、それともオレの継母だという義務からなのか、結局、オレは冬物のジャンパーとセーターに、それにスラックスまで買ってもらった。最初に買ってくれたパジャマも、着替え用にと三枚も買ってくれた。
 そうこうしているうちに、お昼はもうとっくに過ぎていた。オレはもう腹ペコだった。響子にそれを訴えると、じゃぁ、ということで、近くのレストランに入った。
二名様ということで、窓際のテーブルに座りそれぞれ好きなものを食っていると、響子のケータイが妙な音を立てて鳴り出した。

つづく

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