2008年12月20日土曜日

オヤジの女房はオレの女 20

バイアグラ・レビトラ・シリアス

 ケータイの相手は響子のダンナ、すなわちオレのオヤジからだった。
「いま? デート中よ。エヘヘッ。その通り、ご明察のようで。・・そうよ、あなたが女房をほったらかしにするから、若い男と食事してるのよ。どうします?」
と言って、ケタケタと笑う響子。
 オレは響子が好きだ。もちろん一人のオンナとしてだ。だから冗談でなく、響子と浮気でもなんでもいいからしてみたいと、いつも思っている。夢の中や空想、妄想では、もう何度、響子をオレのオンナにしただろうか。
 そんなオレの気持ちなんか、これっぽっちも解らずに、エヘヘッって、笑ってやがる。
「何を食べてるかですって。美味しいお料理ですよ。あなたも召し上がりに来ますか?」
と言うと、ケータイを耳にあてながら、またまた響子が笑う。
「・・ええっ、今日は、お洋服を買いにつき合ってもらいました。・・はい、はい、そうですか。ええっ、分かりました。はい。・・ええっと、リョウちゃんに変わりましょうか。・・そうですか。はい、それじゃ」
 響子がケータイを閉じた。と同時に顔をオレに向け、
「お父さん、来週、お帰りになるそうよ」
と言った。
「ふ~ん、そう」
と返事はしたものの、別にオレには興味なかった。どちらかと言えば、オヤジなど居ないほうがいい。オレとしては、響子と二人きりのほうがいいに決まっている。
 オレはメシをそっちのけにして、響子の顔を見ていた。

バイアグラ・レビトラ・シリアス

 もしかしたら、これはオレの勘違いかもしれないが、なぜか響子の顔から明るさが消えてしまったような気がするのだ。
 それにその目は、どこか遠くを見ているような、寂しげで、悲しげで、そのくせ、何か険しさのようなものが感じられるのだ。
 もしオヤジが恋しいのであれば、久しぶりともいってもいいオヤジの帰宅に、響子は嬉しい筈である。
 したがってその目には、温かみこそあれ、寂しげで悲しげで、しかも険しさなんかとは、無縁の筈ではないだろうか。
 オレは目線を窓の外に移した。
 それによくよく考えてみると、響子が我が家に嫁いできて、もう一年近くなるが、この一年で変わったことは、家の中のことも含めて実に多かった。
 まず家の中は、ほとんど革命的に変わったことは確かだ。オレにしても、我が家が断然住みやすくなった。オレの家は、実の母親が死んでからというもの、そこには家庭は無かったといっていい。響子が来て、炊事、洗濯から掃除、そして生活費のやり繰りなども含めて、細々と一切、文句も言わずやってくれていた。おかげで一つの家庭が出来た。響子がそれを取り戻してくれた。
 でも、変わったことというのは、それだけではなかった。

つづく


バイアグラ・レビトラ・シリアス

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